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ピサ、ボナンノ・ピサーノの扉
2008-01-07
成田空港到着、朝10時20分。
**

今回ピサでボナンノ・ピサーノの鋳造したこの青銅の扉を久しぶりに見ることが出来た。しばらく前まではもともとあった大聖堂にはめ込まれていたのだけれど、今は大聖堂博物館へ移されてしまったのだ。

大聖堂博物館はグループの観光客はまず入場しない。見るべきものはあるのだが、時間がないから。ピサーノ作のこのすばらしいロマネスクの扉も、大聖堂に設置されていた時にはもっと多くの人の目に触れていたのに残念である。

と、よく考えてみると、大聖堂の入口に置かれていた時代に私は何度も前をとおっていたが、一度でもゆっくり見たことがあったか?
「あ、ゆっくりみたいなぁ」と思いつつ、それが入口にある扉であるが故に立ち止まってゆっくり見ることが出来ないでいたのではなかったか?

だったら、人のあまり来ない博物館ではあるが、とにかくじっくり相対する事が出来るこの場所に移されて良かったのかもしれない。今回やっとじっくり見ることができたのは、ここへ移されていたからだったのか。

**
1180年(日本では平清盛が亡くなる一年前)ボナンノ・ピサーノは実は悩んでいたに違いない。六年前に建築し始めた鐘楼が第三層まで造った所で予想以上に傾いてしまい、建築がストップしていたのだから。

そう、この扉の作者ボナンノ・ピサーノはあの斜塔の設計者でもある。地盤のゆるいピサゆえ、ある程度傾く事は予想していただろうが、これほど傾いてしまうのは想定外だった。このまま建築を続けても倒れないか?議論になっていた。

当時の職人は多芸で、彼は同時に大聖堂の扉製作も請け負っていた。こちらの扉4枚の方もしっかりと鋳造しなくてはならい。
※1枚だけが火災を逃れて現代まで生き残っている。
塔の傾きで悩んではいただろうが、ここに見る職人ボナンノの腕は鈍っていない。
がっちりと力強いフォルムで、ルオーの描く宗教画を思い出させ、作者の信仰心を感じさせる「聖家族エジプトへの逃避」(上)、「エリザベツ訪問」(下)である。


ピサ大聖堂の扉を完成させたボナンノ・ピサーノは五年後の1185年、当時ピサと強い結びつきのあったシチリアのモンレアーレに赴く。同地の大聖堂扉の製作を依頼されたのである。つまり、ピサ大聖堂の扉の出来が評価されていたという事。

※この作品も幸い現在まで存続している。
http://www.thais.it/scultura/sch00510.htm

モンレアーレでもピサと同様しっかりと個性を感じさせる良い仕事をして一年後にピサに帰国。未だ工事の中断したままの鐘楼を前に、ボナンノは程なく没した。


彼が埋葬されたのが未完の塔の基部だったという事は六百年以上も経った1820年まで忘れ去られていた。

斜塔は生涯で間違いなく代表作となるべき建築である。生前から彼自身が確信していたのだろうか。ボナンノは自分の死後も守り続けていたかったのではないか。未完の塔の基に葬ってもらったのは、彼のそんな遺志の表れであったように思える。

ボナンノの見守り続けた塔は、その後ピサが直面した敗戦など時代の荒波中で工事を何度も中断させた。しかし、それは崩壊はしなかった。後任の建築家達のアイデアで傾きを少し修正しながら1350年(足利尊氏の頃)完成した。

二十世紀の終わりなり、いよいよ傾きが危ない段階に入った所で、現代の技術を用いて修正が試みられた。ボナンノの眠る基部ごと傾きを直すのである。基部の一方に鉛の重石を大量に載せ、塔の中ほどにワイヤーをかけて引っ張る。何年もその装置が取り付けられた様は、まるで歯列矯正のように見えた。

幸いこの方法は成功し、傾きは止まるだけでなく、逆方向に少し修正されて現在に到っている。

イタリア各地には傾いた塔というのはけっこうあって、ここ二十年の間でもミラノ近くのパヴィアの斜塔が突然崩壊したりしている。ピサの斜塔が他にないほど傾きながらも倒れないでいたのは、ボナンノ・ピサーノが守り続けていたからかもしれない。



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