ローマ、ヴァチカン美術館にある「ラオコーン」像には、二つのヴァージョンがある。右腕が伸びたものと曲げたものと。
「最初発見された時に欠損していたものが後から見つかった」とは聞いていたが、その詳しい状況が知りたくて、この三月末にローマを訪れた時一緒だったローカルガイドさんに訊ねた。
以下は、その時に話してくれた事と手元の本やネットの情報を総合・整理したものです。いろいろな話があり、詳細は断定しかねます。
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1506年にこの像が発見された時には、腕は欠損していた。
時の法皇ユリウス二世は、それを補完するために、お抱え建築家のブラマンテに命じて「腕はどんなかたちだったのか」コンテストを開催させた。
発見された現場に呼ばれて立ち会っていたミケランジェロは、「腕は、背中の方まで曲がっていたのではないか」と意見を述べたが採用されなかった。
視覚的に優れているとされたヤコポ・サンソヴィーノの主張した「上までのばされていた」という案が採用され、1532年になってその腕がとりつけられた。制作したのは、ミケランジェロの弟子だったジョバンニ・アントニオ・モントルソーリだった。
しかし、1906年、ラオコーン発見現場近くの工事をしていたら、大理石の「曲げた腕」が発見された。それは、かつてミケランジェロが主張したように鋭く曲げられていたのだった。
「曲げた腕」は、すぐにヴァチカンに持ち込まれたが、どういうわけかそのまま半世紀、なにもせずに放置されていた。
1953年になって、ようやく接合が行われた。腕はもともと別の大理石片であり、ボディとの接合部分の穴はぴったりと重なったそうである。
四百年間腕が延ばされ続けていた間に、いくつものレプリカが制作された。この写真の上の部分の写真はそのレプリカがホンモノの場所に設置されている珍しいモノ。
2007年の某展覧会で、ホンモノが移動してしまっていた間だけ置かれていたのであります。