シュトットガルトを出てしばらくすると、雪がバスのフロントグラスをたたきはじめた。
寒くなるのかと心配したが、十一時にストラスブールに着いてみると雪はなく、わりに暖かい。
午後、はじめて入ったノートルダムの博物館で、こんな彫刻を見つけた。
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15世紀にオランダはライデンからやってきたNicolaus Gerhaert von Leydenニコラス・ゲアハルト・フォン・ライデンという人物の作品。
後期ゴシック、小松の好きなリーメンシュナイダーより半世紀ほど前に活躍した人物であった。
この美術館の目玉のひとつとして取り上げられているのは、同じ作者の「黙想する人」という作品。
しかし、この「麻痺した男の顔」という作品を見て、注文作品ではなく自分が造りたいものをつくっていた人だということが、伝わってきた。
思い出したのは、以前にヴィーン(ウィーン)で見た、メッサーシュミットの作品。※2009年11月25日の日記でその時の事を書いてあります↓
http://komatsusin.hopto.org/koma/modules/iDiary/index.php?mode=show&date=20091125★ニコラス・ゲアハルトの生涯について、詳しい事は分かっていない。
1430年頃に生まれ、同じオランダはハールレム出身のClaus Sluter(クラウス・スリューテル)に教えられたかと推察される。
※スリューテルはディジョンにある「モーゼの井戸」の作者。※二十年ほど前に、何の前知識もなく見てびっくりした彫刻でいっぱいの屋外にある大きな井戸でした。
三十歳ごろ、当時の中央ヨーロッパ随一のカテドラルにかかわる仕事をしにストラスブールへやってきて、1462年から67年ごろまで滞在していた。
ストラスブール大聖堂の聖ヨハネ礼拝堂には彼のイニシャル・サインが残されているのだそうだ。
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「注文」ではなく、自分自身が造りたいと思った作品を造り続ける事は、現代でも難しい。
特に、技術的に最高峰まで極めた人が、この問題に突きあたるのだろう。
自分が造りだしているものの中にある、時代や時間を超えたものは何か?それを達成しえているのか?
必然、注文主のポートレートを端正につくる事には飽き足らなくなっていくのだろう。