きのう成田到着後、直接行った「ルーベンス展」で気に留まった作品。
ルーベンスの兄の墓碑に飾られていたという肖像画である※写真左上
弟とは全く違う道に入ったこの兄フィリップがどんな人物だったのか、ちょっと興味があって調べてみた。経歴はとても真面目で何も特筆すべきものはなかった。弟が歴史に残る大画家にならなければ、四百年後に日本の一般人が興味を持つことはなかっただろう人物。
面白かったのは、同時代につくられた彼の肖像版画※写真右上。
墓碑に載せられていたものとずいぶん違う。
遺影というのは、いちばん見栄えが良いものが選ばれる。だから、弟ルーベンスが描いたものがかっこよいのは当然だ。写真のなかった時代、残された肖像画は本人を記憶する為の一番重要だった筈だ。ましてや兄を描くのなら力もはいっただろう。本人らしさよりも「本人が後世どのように記憶されたかったか」を考えて描かれるべきものかもしれない。
だから、右上の版画の方が、本人らしいものなのだろう、きっと。
下の絵の二人の人物、左は弟ルーベンス本人、右は兄フィリップ。二人がイタリアへ滞在していた当時、兄フィリップの先生のところを訪れた図を描いたものから、その一部。
弟ルーベンス本人の方が頭が剥げている。なんだか年齢も上に見える。この絵もかっこよく見せるべきは兄の方で、自分は「ついで」に描いているから、自分自身の容貌には容赦しなかったのかも(笑)★直感的に思ったのだが、左側の自分自身は後から書き加えたものなのかもしれない。弟としてその時代に書いたにしては、年をとりすぎている。兄の右にあと二人の人物が画かれており、それだけで絵画としては完結していておかしくない構図であるし。