エールフランスは朝8時過ぎ成田空港到着。
今日はスーツケースを宅配して、渋谷BUNKAMURAで開催中のルーベンス展へ行った。
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ルーベンスはバロック絵画の巨匠中の巨匠だが、個人的にそんなに好きなわけではない。やたらカラフルでうねうねと過剰に動きを強調したような筆致が、どちらかというと「嫌い」だった。
見方を変えたのは、ヴィーンのアルベルティーナ美術館で彼のデッサンを間近に見てからである。※この写真のもの、今回の展覧会には出ていません。
デッサン帳の一枚かと思われる大きさの紙に、彼の息子ニコラオスを描いている。首には魔よけの意味を持っていたサンゴの首飾りをつけ、愛情深い視線がすべての筆致から伝わってきた。
工房で描かれた大型の注文絵画とは全然違うルーベンスがそこにあった。画家としての本当の力量が感じられる。息子を描く手に愛情があるのは当然だが、同時に冷徹な観察眼があることも感じられる。
それ以来、ルーベンスがその工房で大量に制作した作品の中から、本当のルーベンスの力が感じられるものを探したいと思うようになった。
今回のルーベンス展でも、見つけることが出来た。
ルーベンスには一緒にローマへ留学した三つ年上のフィリップという兄がいた。弟とは全く違うストア派哲学者として地位を得て、故郷アントワープで活躍していたが、三十六歳ごろに亡くなっている。
葬られた墓碑の上に置かれていたと思われる肖像画が出展されていたのである。当然、これは弟ルーベンス自身が心を込めて自身で描いたにちがいない。