パリを出て、モネの住んだジベルニーへ。ルーアンを見学してモン・サン・ミッシェルへ向かう。
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ジベルニーへ向かう道で雪まで降ってきた時には驚いた。ひと月前の豪雪トラブルが頭をよぎった。が、幸いそこまでには至らず、雪は雨にもどってほっとした。
ジベルニーはモネが後半生四十年を過ごした家と、数多の絵に描かれた睡蓮の庭を訪れる。今回は残念ながらまだ睡蓮の葉は浮かんでいなくて、想像していた風景とは違っただろう。多くの観光客はがっかりするかもしれない。
しかし、この風景もまたモネが愛でた風景なのだ。水面にしだれかかる柳の向こうに色とりどりの傘の花がひらくところは、モネだって見ていない(笑)
これを「きれいだなぁ」と思えないのでは旅を楽しめない。ガイドブックの写真と同じものを求めるだけでは、はるばるやってくる意味はない。
我々が入場しようとした時、ルアーブルあたりに停泊する客船からのバスが何台も到着した。船からのバス観光はいつでもごったがえす。何台ものバスが同じ行程で動くのだから当然である。
我々は小グループなので、彼らの動きから離れながら庭を歩く。総勢百二十六名の大団体さんは一時間ほど滞在してすぐに去って行った。
今日の我々はもう少しだけ長くいられる。少し静かになった雨の庭を、モネが大家族と住んだ家の二階から見下ろす。モネは当然冬にだってここに暮らした。自分の画いた絵ではなく、日本の浮世絵が所狭しと飾ってある。自分は訪れることのなかった日本の景色・季節を想っていただろう。
一階には黄色を基調にしたダイニングがある。ひきとった子供たちもふくめた大家族が「今日は寒いから、ここでゆっくり食事しよう」とわいわい集まってくるのが目に浮かぶようだった。
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ジベルニーを11時過ぎに出てルーアンまで一時間ほど。路肩に雪がみられたが、ルーアンの旧市街はだいじょうぶ。食事をして歩き出すタイミングでは傘をささずに写真を撮った。
ルーアンの街は何度も日本人ガイドさんに案内していただいているが、「もう知っている」なんてとても言えない、興味深い街。いつも感心してガイドさんの話を聞く。もちろん語り手の努力あっての事だが、いつでも、いちばん楽しめるお客の様に訪れる事が出来るのは幸せである。
15時過ぎからは一路モン・サン・ミッシェルへ。事故で渋滞する道。時差で眠くなりがちだが、19時少し前、地平線・水平線にあの姿が見え始めると、だれでも眼が吸い寄せられる。やはり、一度は「行ってみたい」と思わせる姿である。