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007映画の中のターナー
2013-03-08
パリよりエールフランス便にて帰国の途へ。
機内で映画三本。
●「ヒッチコック」〜アンソニー・ホプキンスがヒッチコックをこんな風に演じられるなんて、びっくり。彼の役者としての懐の深さが分かる。
●「life of Pi」日本での副題は「虎と漂流した227日」〜アドベンチャー映画ではない。さして興味を持たずに見始めたが、なかなか興味ある主題を扱っていた。簡単言えば『人の生きる意味』や『価値』とは何か?
虎と漂流した話は、ひとつのレトイック=修辞法である。

●007シリーズ「SKY FALL」〜内容は相変わらずの007。
左に座っている007へ右からQが歩みよってくる。背景はロンドンのナショナル・ギャラリーにある、ターナーの「曳航されるテメライル号」である。

絵は、トラファルガー海戦にも参加した高名な軍艦が、蒸気船の時代になってついに解体されるためにテムズ川を曳かれていくところを描いたもの。

若いQが年齢のいった007を、このテメライル号になぞらえて話しかける小道具として使われている。

**
ターナーのこの作品を切り口にして、もう十数年前にナショナル・ギャラリーが行った展覧会が忘れられない。大規模なものではなく、たった五室だけのごく小規模な展示で、テメライル号の誕生からその解体までを、あたかも人の一生のように追っていったものだった。

戦艦テメライルが、帆船時代最後の大海戦トラファルガーでどのような位置にいたのか。海戦図で解説。その後蒸気船の時代になってマストを切り落とされて貨物船になっていく経緯。いくらで売られたのか、帳簿も展示されていた。

そして、解体され、その部品は・・・最後の展示室に入ると「テメライルは生きている」として、各地の建物に移設された船内の椅子や時計やプレートが並んでいた。

そこに展示されていた品々・ひとつひとつには大した価値はない。古い廃船にまつわるアンティークにすぎない。しかし、これらをひとつに集めて再構成することで、テメライル号のたどった「人生」があぶりだされ、それが心に響いてくる。

これこそが、優秀なキュレーターの仕事である。はじめて展覧会の企画者を称賛したくなった。

有名な作品をパンダのように展示するだけでは良い展覧会になどならないのである。

話がそれましたね(笑)



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