フィンランド航空にてバルセロナへ到着。
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グエル公園でガウディが意図していたのは、六十軒のヴィラが立ち並ぶ高級住宅街だった。しかし、時代は彼の意図にはついていけず、売れたのはたった一軒だけであった。
高台にぽつんと一軒だけ建てられているのがそれ。
カサ・トゥリアスは1905年に弁護士のマルティ・トゥリアスの為に建てられた。ガウディの弟子ジュリアス・バトレヴェルによる。
トゥリアス家というのは、なんと現バルセロナ市長のハビエル・トゥリアスのファミリーになるそうな。当時から現代にいたるまで、この街の上流階層に属しているわけだ。
友人グエル氏に勧められたとはいえ、こういう買い物をしたのは、やはり彼自身に先見の明があったのだろう。他の誰も買わなかった郊外の山の中(当時はそういう立地だった)に、注文住宅の購入を決めたのだから。知性というのは他に流されない決断力も意味する。
今もし売り出されたらいくらの値が付くか分からないような物件だ。
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グエル公園の売れなかった一軒一軒の宅地は三角形をしていて、それぞれが道路を隔てていた。住宅どうしが隣あわず、開けて「こんにちわ」にならない構造。
広場は六十世帯の四百人が集まれるだけの広さを持ち、その下は屋根付きの市場になっている。これが実現していたらグエル氏も破産しなかったかしらん。
現在のグエル公園には、売れたこの一軒と、ガウディ自身の住んだ家、そして、もともとこの山を持っていた地主の邸宅を基に拡大改装した小学校がある。