国境が陸路でつながれている場合、道路標識に隣国の名前が出てくる。トルコの西の端・エディルネ近くで、隣国・ギリシャへの道を示す看板を探した。
ギリシャだから「GREECE」?いやそれは英語の呼び名。トルコではトルコ語でのギリシャを表す呼び方があるに違いない。
それは「YUNANISTAN」であった。
ガイドさんに訊ねると、もともとトルコ人はギリシャのことをYUNANI=ユナニと呼んでいたのだそうだ。これはIONIA=イオニアがトルコ語に変化したもの。
「ユナニ(イオニア)に住む人」という意味で「YUNANISTAN=ユナニスタン」がギリシャ人を表す言葉になった。
おもしろいのは、イオニア地方というのはトルコの地中海側南西部(現イズミール周辺)を指すということ。国内の一地方に住む人という意味で外国を表す言葉がつくられていったのか。そこにかつて、どれだけのギリシャ人が住んでいたのか、と、考えさせる。
また、ギリシャの西部アドリア海から南下したギリシャ沿岸はイオニア海と呼ばれ、イオニア諸島という島々がある(※その島の一つレフカス島は小泉八雲の故郷だ)。
ここが古代に現トルコのイオニア地方へ移住した人々のルーツになっていたが、19世紀はじめまではトルコの領土であった。
ギリシャは二千年ものあいだ自国を持てない民族だったのである。