チャナッカレを出て一路イスタンブルへ。午後、渋滞に巻き込まれずにイスタンブル旧市街まで入ることができた。
はじめは朝トロイ遺跡へ行く予定だった。が、この十年のこの旅の企画パトロネス氏に「実際に行ってもたいしたものは見られないんだよね?」という質問をいただいた。
旅の現場を預かるクリエンテスとして、正直に「そうなんです、トロイ遺跡は視覚的・規模的にはたいしたことありません」と答えると、「じゃ、今日のうちにトプカプ宮殿みてしまおう」、という話になった。
実は、こういう「やめる」という決断がいちばん難しい。
旅においては、誰もがたくさん見てみてみたい欲求にかられる。見てないものは過大評価してしまう。だから、「あれもこれも」という行程を組んで結局忙しく長距離を走り回るパッケージ・ツアーは売れる。
多くの「売れ筋」「ベストセラー!」はそういった心理を突いている。
《手造の旅》の行程を練っていく中でいつも直面しているこの課題。「売りやすい」ものを作るのではなく、旅の現場で本当に充実したと感じられるものを提案すること。
だから、欲張らずに「やめる」決断ができる人に敬意を表します。
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トプカプ宮殿をじっくり見学して後、ホテル・チュラン・パレスを目指す。一度チェックインしてから夕食へ出るつもりだった。トプカプ宮殿近くを出発したのは18時半。三十分ほどでホテルに到着の予定だった。
しかし、ガラタ橋を渡ってドルマバフチェ宮殿の手前から道路渋滞がどんどんひどくなってきた。ついには百メートル動くのに十分もかかる状態となり「こりゃあホテルへ着くのは20時すぎ?」という状況…。
「渋滞だからどうしょうもない」は、誰でも言うこと。なにか方法があるのではないか?車は抜けられなくても、人間は歩くことができる。トラムを使えるところまで使う?逆方向へ向かうタクシーに乗る?
地図を見るとすぐ近くに地下ケーブルカーの駅があった。レストランもたくさんある繁華街の中心タクシム広場まで上がっていくことができる。よし、これでしょ。
荷物とガイドさんにはそのまま車でホテルへ向かってもらうことにして、我々はケーブルカーの乗り場へ向かう。一回3トルコ・リラのトークン(※この写真の赤いプラスチックメダルがそれ)を買って乗車。十分もかからずにタクシム広場へ到着。
丘の上のタクシム広場は週末でごったがえしていた。目的のレストランへ入り、前菜とビールが出てきた頃にガイドさんから電話があった。20:30、我々の荷物を積んだ車がやっとホテルに着いたのである。
★チュラン・パレスがイスタンブルで最も素晴らしい雰囲気を持ったホテルである事は確かだが、度々この渋滞に遭うのではたまらない。充実した見学をするためには、今後アヤソフィア周辺徒歩圏のホテルを選ぶほうが良いかもしれない。