椿山荘の一角にある絵画作品(田村能里子さんの「はないかだ」)に目が止まった。特別に好みというわけではないけれど、空間にちょうど良い雰囲気をかもし出している。
歴史あるホテルのロビーという空間。あんまりモダンなものはういてしまうだろうし、日本画よりも洋画の方が洋式のホテルらしい。暖かい色合いもちょうどよい。
絵画というのは、美術館に置かれるために描かれるのではない。もともとは普通の生活環境を楽しいものに変えるために存在する。
美術館という、わざわざ絵画や「美術」だけを集めてそれを鑑賞するという場は、それらの作品の本来の場であってはいけないのかもしれない。
もっと厳しい言い方をすると、「美術館は『絵画の墓場』」という言葉もある。かつては邸宅や寺院をかざっていたものが、行き場をなくしたり、あるいは買い取られたりして、一同に会しているという場所。
それよりは、この写真のような日常の環境にある方が「正しい」場所であるように思えるのである。
この作品は今年2012年の3月にこの場所に設置された。この場所に置かれることを意識しながら描かれた絵画なのだ。ぴったり雰囲気に合っているのも頷ける。長く、この場所に有り続けてほしいとおもう。
今は美術館に入ってしまっている多くの古い作品たちも、もともとはこんな空間に置かれていたに違いない。