この麻布がユネスコの無形文化遺産にまで登録されているものだと、教えられてはじめて知った。
「がんぎ通り」という、豪雪の時にも軒を歩いていける街づくりを再現した一角で、中島屋という店にふらりと入っての事。
麻の繊維をほぐして、一本の糸につむぎだしていくのに数週間。それを織り上げて、越後の雪で「雪さらし」をするという工程を尊守しなくては「越後上布」は名乗れない。
写真上で奥にかかっている着物がそれ。品の良い半分透けて見えるいわばシースルー素材。「蝉の羽」にもたとえられるのだそうだ。なるほど。
この一枚は近くの由緒ある禅寺の主のために丹精せいてつくっていたのだが、差し上げる前にその方が亡くなってしまい、このお店に「手間賃でよいから」と譲られたそうな。
売れば二百万円の値がつくそうな。
こういう辛抱強い手仕事というのは、日本のみならずどの世界でも衰亡・消滅の危機にある。旅人がちょっと見て何が分かる、とは思うけれど、国内版《手造の旅》でとりあげてみたい場所だ。