JAL406便は14時無事成田到着。
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パリから南へ一時間弱、フォンテーヌブロー宮殿のフランソワ一世の廊下を飾る十六世紀前半のフレスコ画連作。そのうちの一枚にこの象が描かれていている。大きさも縦2m近くあるだろうか、一目見たら忘れられない。
以前見たときに「これは古代カルタゴの英雄ハンニバルの物語と関係あるのでは?」と直感的に思った記憶がよみがえった。今回もご一緒したガイドさんに質問をしてみた。
しかし、お答えは「これは王権を『象のように賢くて力がある』と表現したとだけ解説してありますけどねぇ」というもの。ハンニバルとは関係がないらしい。
どうも気になるので調べてみた。
描いた人物は分かっているロッソ・フィオレンティーノというイタリア人が1540年頃に完成させている。彼は若い頃にローマでラファエロの助手をしていた事がある。どうりでこの連作の中の作品がヴァチカンの「ボルゴの火災」に似ていたはずだ。
いろいろWEBページを探しているうちに、同時代につくられた版画が見つかった。大英博物館所蔵、1540年頃にAntonio Fantuzziという人が制作。※写真下
二枚は同じシーンを描いているが、細部は確実に違いがある。版画が完成したフレスコ画を見て描いたというものではないと思われる。大英博物館HPの解説によれば、ロッソがフレスコ画の元にするために描いた絵を写した版画ではないか、という。
象にはフランソワ一世のイニシャル「F」がつけられていて、確実に王をあらわしている。左に立っている人物はギリシャ神話の最高神ゼウス(ジュピター)の若い頃、ポセイドン(ネプチューン)とプルートであると解説されていた。なるほど、これは確かにフランスの王をローマ皇帝の様に賛美するために構成された図であるらしい。
では、なぜ、フランス王が=象なのか?
小松の見解としては、王を象にたとえたのは、カエサル(皇帝)という言語の語源が古代カルタゴの言葉で象を指す事が理由だと思う。
この絵の向かいにはフランソワ一世の業績をたたえる連作フレスコ画もあり、そこで王自身がローマ皇帝の服装に身を包んでいるのである。
なお、十九世紀までは、この上に別の絵がはめ込まれて隠れていたのだそうだ。