浅草の臨時小屋で七ヶ月にわたって行われてきた中村勘三郎が主催する「平成中村座」も今月で最後。
江戸時代の芝居小屋を再現したというこの場所もまたおもしろい。
正確にはわからないが、新橋演舞場の半分ぐらいの大きさの雰囲気。ただ、その分座席は小さくてお尻が痛くなります。
演目は
・毛抜き
・志賀山三番叟
・髪結新三
一番印象に残ったのは、志賀山三番叟の前におこなわれた勘三郎の口上。いや、正確に言うと、そこで横に控えて後口上を述べた二代目中村小山三(こさんざ)であった。
大正9年生まれの女形。
話し始めたとたんに「おばあさん」がそこにいる。きりっとした品をと艶をしっかりとどめた様子がうつくしい。女形としてというより人間として美しい。
長い年月、何人もの勘太郎、勘九郎、勘三郎をそばでたててきたそのぞんざいは、「中村家の乳母(めのと)」と、イヤフォンガイドの人が表現していた。
彼女が話し始めると、前に話していた勘三郎の言葉がとても世俗的でテレビ的な声だと感じた。それだけ舞台役者としての声を持っている。会場全体が、彼女がそこにこうして座していることに感動していた。
あとは、「板の上で死ぬ」事ができれば、きっとそれが彼女の本望ではないだろうか。
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