今回久しぶりのカナダで消息がわかったものがある。カナダに移民した日系人のための老人ホーム、その名をNIPPONIA HOMEニッポニア・ホーム という。
ガイドについてくださった方が、二十年以上オンタリオに居られる方だったので、ふとその話をしたら「十年ほどまえにクローズしたんですよ」と教えてくれた。※こういう話はただガイディングを習った若手にしても「それなんですか?」で、通じない。そんな日系人たちの話になど興味を持たないガイドでなく、小松の記憶を共有できる人でよかった。
ここを訪れたのは1990年代の初めだったと記憶している。
オンタリオ州、ナイアガラからトロントへいく果樹園地帯の中。カナダでもいちばん気候の良い場所にある。ドアを開けるといきなり大きな日章旗が掲げられていて、古い日本のレコードがまわっていたのを鮮明に記憶している。
我々日本からの視察団が行くと、少しおぼつかなくなった日本語で、涙を流さんばかりに迎えてくれた。自分たちがもう帰れなくなってしまった故国からの来客に、我々には理解できない感慨を持たざるを得ないのだろう。
当時小松がメモした情報によると、入所者は23名。平均年齢は88歳。20年前は36名で、入るためのウェイティングリストも長かったそうだ。
貧困と戦争に翻弄された一世たちが、人生最後の時間を日本食と日本文化の中で過ごしてもらえるよう、日系人一世の成功者山家安太郎という人によって1958年に創設された場所であった。
その場所が2000年にクローズしたのか…時代は変わってゆく。
※このあたりのことについてはまた別に書きます。