彼女にはじめてあったのは十五年か二十年ぐらいは前になるだろう。
まだ数回目のスペイン、グラナダの空港から市内へ向かうバスの中で話し始めた口調があまりにフレンドリー、あまりにタメ口で、今ならタレントのローラみたいで(笑)、小松の口はあんぐり開いたまま閉まらなかった。
話している事もガイディングなんだか雑談なんだか、歴史的な人物や民族事物への解説も分かっているんだかいないんだか、で、当時の小松は「それはちょっとぉ〜」と、やんわり言上申し上げたように記憶しております。
でも、まぁ、今は昔。
朝、ホテルにてお会いして、「いやぁ、おたがいトシをとりましたねぇ」と笑い合って、普通にアルハンブラ宮殿の見学を始めてみれば、年月は、やっぱりどんなひとも変化させるし丸くさせる。
アンナさんもそれなりに学習し進歩したのだろう。今回は口をあんぐりあけずに、ひと言もうしあげたりもせずに、隣でニヤニヤしながら聞いている事ができた。
それでも、人は年月で変わらない部分がもちろん、ある。
朝早いアルハンブラのカルロス五世宮殿の中庭に一番乗りすると、まだ他のグループも観光客もいない中庭で「フラメンコってこうするのよ」と言って彼女は突然踊りはじめた。
昨夜、皆さんも洞窟のフラメンコを見に行っていたので興味ある。ウケているとみたアンナさんは続けて言った。「はい、皆さんご一緒に」。
※写真はみなさんがつられて手足動かされている場面であります(笑)
その後も今日のアルハンブラ見学は終始アンナさんペースですすんだ。んん、それはそれで、よし。
彼女がどんなところで生まれ育って、この二十年がどんなだったのか、知らないし知る必要もなし。世界中にはいろんな「日本人」が住んでいて、いろんな個性で、訪れる我々にそれぞれの目から見た街を紹介してくれる。
私も、それらを幅広く受けとめるだけの度量の広さを、ここ二十年で学んできたのを実感する。
一番重要なのは、語るその人がその場所を好きなのかどうかという事に尽きるだろう。毎日ガイディングしていても、うんざりしないで飽きないで愛情をもって、その日その時間を我々と過ごしてくれる事。
アンナさん、またよろしくね。