新橋演舞場にて「壽 初春大歌舞伎」。
二つ目の演目、「連獅子」はこの時期に親子で演じられる定番。これまでも何度か見ていたので、「ああ、毛振りをやる、あれでしょ」という風に軽く考えていたのだが、今日のものはまた違っていて退屈しなかった。
歌舞伎は同じ演目を繰り返し演じるけれど、毎回それぞれに違えてあって見飽きないものなのだと再認識。
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この中で、本筋とは少し外れて、途中に挿入されている狂言演目がある。
一遍上人を信心する「南無阿弥陀仏」系の僧と、日蓮上人を祖とする「南無妙方蓮華教」の徒。これが中国の聖山への道を同道することになり、お互いの宗旨を述べているうちに口論となる。
片や真鍮の鐘を手に「南無阿弥陀仏」、此方日蓮宗らしく団扇太鼓(うちわだいこ)で「南無妙法蓮華経」を唱える。
お互い声高々に張り合って唱えていくうちに、気付いたら逆になっていたというオチ。これを見て昔の人も大笑いしたんだろうなぁ。
これは、いわば仏教における宗派対立を笑い飛ばすお話である。
キリスト教世界なら、果たして百数十年前に同じような劇が上演できる環境があっただろうか?
日本はやはり宗教という呪縛からかなり自由な、世界に稀有な国である。