19世紀後半、イタリアがやっとひとつの国として統一を果たした時代、国としての一体感を育てるために、全国の学校で読まれた本が「クオレ」だ。CUOREとは「心」という意味である。
だいぶ以前、『クオーレ』の時代―近代イタリアの子供と国家 (ちくま学芸文庫)を読んではいたが、CUOREそのものを読み通したことはなかった。
一度読み通しておきたいと思っていたので、先日新潟へ行ったとき駅の本屋で見つけて買ってしまった。そしてその日東京へ戻る新幹線の中で半分、先日イタリアへ行く飛行機の中で後半を読むことができた。
意図的であるにせよ、ここにはイタリアを祖国として愛そうという気持ちがいっぱいにあふれている。
たとえば、イタリア半島の南端カラブリアから北のトリノへ転校してきた生徒を前にして先生はこう言う。「この少年は、イタリアに優れた人たちを生み出した輝かしい土地の生まれです。〔中略〕君たちはこの少年に親切にしてやって、自分の生まれた町から遠く離れていることを忘れてしまうようにしてやってください。イタリアの少年は、イタリアのどこの学校へ入っても、かならずそこに兄弟が見つかるという事を、この少年にみせてやってください。」
この読本が書かれた時代、イタリアはやっと祖国を得たばかりの貧しい国であった。現代のように北イタリアが南イタリアをお荷物扱いするような意識はなかった。
現代の先進国となったイタリアでは、南部を切り離してしまおうという過激な「北部主義者」の政党も力をもっている。彼らに「クオレ」は、ただ時代遅れとしかうつらないのだろうか。