シルバースピリット号はローマの外港チヴィタヴェッキアへ接岸。
終日のローマ市内とヴァチカン美術館観光。
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ローマ観光へのバスが出発した後、船客もまばらな船にチヴィタヴェッキア市長が表敬訪問に来られたそうである。
きれいな長髪で日に焼けたにこやかな五十一歳のイケメン市長が、この写真の記念盾と通し番号のついた公式な歓迎文書を下さったそうな。
1615年に支倉常長が到着した縁で、チヴィタヴェッキアと石巻市は姉妹都市となっている。ここには長崎の二十六聖人に捧げられた「日本人聖殉教者教会」もある。いただいた文章の中では「TWIN CITY=双子の町」とまで書いてある。
今回の東北大地震についての「チャリティ・クルーズ」でもあるので、こうした訪問となったようだ。
盾に描かれたチヴィタヴェッキア市の紋章は昨年来た時に調べていた。OCとはOttimo Consiglio(最善の忠告)を意味している。
中世、9世紀にイスラム海賊の襲来に悩まされていた人々は海辺の町を離れて山に暮らしていたが、水夫レアンドロの「最善の忠告」により、樫の木の下で話し合い、町を再建して住む事に決めたという故事にちなんでいる。
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一方、ローマ市内の観光は、天候に恵まれて・・・というか陽射しもきつく暑かった。それに近年夏休みはとてつもない数の団体客がイタリアにおしよせるので、著名な観光地は十数年前とは比べものにならないほどの混雑である。
特にヴァチカン美術館はすごい事になっている。ルーブル美術館のように美術館として効率よく見学できる建物に改修する事もままならないので、時にラッシュ時の地下鉄ホームのような状態になる。
それでも、ガイドさんと共にまわればそれなりに新しい発見はあるもの。今年「ベアート=福者」に列福された前法皇ヨハネ・パウロ二世の棺が公開されている。
サン・ピエトロ大聖堂前の広場には巨大な写真が飾られている。その写真と同じぐらい巨大な聖母子のイコンの写真があったのでその理由を尋ねると、こんな答えがかえってきた。
「1981年にこの広場で法皇が撃たれた時、倒れた法皇はこのイコンの聖母子に『お助け下さい』と祈ったそうです。この聖母子が法皇をお助けになった、というのです。ほら、あそこにあります。」
広場からシスティーナ礼拝堂の屋根が見える方向に、小さくその聖母子イコンが確かに微笑んでいた。