最寄駅の階段下に、小さなおにぎり屋さんがある。店員二人でいっぱいというスペースと十種類ほどのお握りだけが並べられた二段のショーケース。それだけの店である。
駅前にコンビニはある。おにぎりも売られている。弁当も、飲み物もおでんも、パンもスナック菓子も、もちろん売られている。宅配サービスもあるし、コピーもとれるし写真のプリントも出来る。
つまり、なんだってそのコンビニで事足りる状況なのだ。
しかし、それでも、階段下のちいさなおにぎり屋さんは毎日元気に続いている。
ある時、時間がなくてそのおにぎり屋さんから三つ買って階段を駆け上がって電車に乗った。そして、その日の昼に食べてみると、それは、コンビニのおにぎりとは全く違うものだった。
単純にとてもおにぎりらしい「握られ方」をした、「手造り」の味がした。コンビニのおにぎりも、それなりにおいしくはあるけれど、「具が入ったライスボール」という気がすることも少なくない。
それから小松は、たとえコンビニに行くついでがあっても、おにぎりだけはその店で買う事に決めた。
《手造》であればこそ、そう思わせてくれる。気持ちが入っていないおにぎりでは勝てないのであります。
※写真はその店でしかないだろう「味噌バターおにぎり」。