フランスはアルザス地方の中心都市ストラスブールに連泊する中日。
朝10時前にコルマールへ到着。ここは小さいが歴史ある街。そして、クリスマス市が有名なのでこの時期はいつも大混雑・・・と思ったら、駐車場からすでに人が少ない?
そうか、今日は火曜日でウンター・デン・リンデン美術館が休館だからなのだ。
この美術館はコルマールを訪れる欧米人のあいだでは必見とされている。なかでもグリューネヴァルトのイーゼンハイムの大祭壇画は数ある祭壇を圧倒する迫力だ。
この祭壇だけを見にこの街に来る人があるのも分かる。小松もはじめてこの町へ来た時には、少ない時間をすべてこの祭壇を見るのに費やした。
・・・そうは言っても、今日はお休みなのだから、今日ご一緒の皆さんには「主要美術館がお休みだからこそ行く時間がとれる場所」を案内したい。そういう場所が必ずあるのが、歴史ある街というもの。
そこで選んだのがこの写真の祭壇画「バラの茂みの聖母」があるドメニコ教会であります。
あ、クリスマス市ですか?
もちろんコルマールのクリスマス市も一見に値いたします。はい、それはまちがいないです。でも・・・それよりも、このショーンガウワー作の祭壇画を紹介するのは、小松がご一緒した場合の価値だと思うので、こちらへご案内〜(もちろんご希望の方だけ)。
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マルティン・ショーンガウアーは1450年ごろコルマールにうまれたとされる。イタリアではちょうどあのダ・ヴィンチがうまれた頃にあたる。同年代の彼らの間に直接の交流はなかっただろうが、ショーンガウワアーは噂ぐらいきいたかもしれない。
ダ・ヴィンチがルネサンス的絵画の革新者だったとすると、ショーンガウアーは中世的職人絵画の最も優れたひとりと位置づけられるだろう。
※ショーンガウアーの経歴については、また別の機会に。
この作品が描かれたのは彼が遍歴修行を終えてマイスターとして工房をかまえたすぐ後、二十才をすこしでたぐらいである。
二十歳そこそことは思えない熟達ぶり。銅版画の作品もたくさん手がけていたので、若くして彼の名は近隣では有名になっていっただろう。
二十年遅れて、ニュルンベルグの街に後年の大家アルブレヒト・デューラーがうまれる。
1492年、二十歳をすぎたばかりのデイューラーは、ショーンガウアーの教えを請いたくてコルマールへやってきた。
しかし、めあてのショーンガウアーは惜しくも一年前に他界してしまっていた。
がっくりしたデューラーも、きっとこの「バラの茂みの聖母」をしげしげと見あげたことだろう。
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この祭壇画は、はじめコルマールの「カテドラル」の為に描かれたものだった。が、二十世紀に盗難に遭ったそうだ。幸い戻ってきて後、よりセキュリティのゆきとどいた現在のドメニコ教会に、ただ一点だけの祭壇として置かれる事となった。
入場料の一ユーロはまさにこの作品を見るためだけに支払うのだが、まったく惜しくありません。