ウィーン連泊の中日。
午前中の観光でシェーンブルン宮殿と美術史美術館をまわるのは少々無理がある。特に美術史美術館を一時間でささっとまわるのでは後ろ髪引かれる思いになる。
しかし、そんな短い時間でも、見識あるガイドさんに説明してもらってまわるのならば、何も分からずに一日見ているよりも余程価値が理解できる。
今回、ルーベンスの作品を多く解説していただいたが、中でもこの「聖母被昇天」が興味深かった。
※写真上(ウィーン「美術史美術館」所蔵)
この作品はもともとベルギーのアントワープ大聖堂の主宰壇の為に制作されたものだそうだ。
制作年は1611〜14年となっているから、ルーベンスが三十代前半の頃である。
※写真下、現在アントワープ大聖堂の正面祭壇に飾られている「聖母被昇天」小松撮影なので下から見上げた角度になっております。
こちらは1626年制作、ルーベンス円熟の四十九歳頃の作になる。
両者を比べると、三十代のルーベンスのものでも充分に上出来だが、十五年後の作品の方がより動きが感じられるダイナミックな仕上がりだと言えるだろう。
最初の作品は大聖堂に飾られることはなかったようで、「かわりに1621年から1776年まで同じくアントワープのイエズス会に属するマリア礼拝堂に飾られていた」と付属解説板に書かれていた。
その後、ここウィーン美術史美術館に所蔵されるようになるまでにどのような経緯があったのだろうか。
この作品の置かれた部屋近くには、アントワープで見られるものと非常に似た作品がいくつも展示されていた。きっとそれぞれに秘められたストーリーがあるに違いない。
これらを自分自身の目で比較してする事が出来るのは、実に嬉しい仕事上の役得ではある。
これらを実際に並べて比較する展覧会を、いつか誰か企画してくれないだろうか。
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アルベルティーナ美術館の近くで昼食を食べ、午後は希望の方をベルベデーレ宮殿の「オーストリア・ギャラリー」へご案内する。ここではなんといってもクリムトの「キス」が有名である。
夕方、シュテファン大聖堂近辺を歩き、市民公園へ行く道すがらにみつけたお店で、旬の白アスパラを食べる。
はじめて入った店だったが満足いくアスパラであった。