KLMオランダ航空にて成田空港到着。
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きのうクレラー・ミュラー美術館で常設展示以外のところに、この写真のような作品をみつけた。
ヒトラー?
そう、ヒトラーの肖像画だが、これはふつうの絵ではない。精神病を患い、ナチスの迫害を受けたことのあるテオ (Theo 1918-1998 ドイツ) という人物が描いたもの。
以前、アール・ブリュットの展覧会でひと目見て忘れられない衝撃を与えてくれたのですぐに分かった。
※アール・ブリュットについては、「こま通信」HP内でもSarch検索していただければ以前小松が書いた日記がみつかります。
しかし、なぜこれがクレラー・ミュラー美術館にあるのか? 同じ場所に展示してあるのは皆ヨースト・ファン・デン・トールンというまだ存命中の彫刻作品ばかりである。
よく分からないままに日本に戻って、美術館のサイトで調べてみて、事情がわかってきた。
テオの描いたヒトラーの肖像は、トールンという作家の所有物だったのである。そして、彼はクレラー・ミュラー美術館で彼自身の作品を展示する時に、同じ場所に展示したいと考えたのだ。
何故か?
クレラー・ミュラー美術館所蔵品の代表格であるゴッホの作品も、「アール・ブリュット」であると、トールンは思っているのだ。
ゴッホは確かにプロの絵描きになりたくて、人生の最後の十年を生きたけれど、実際には一枚の絵も(一枚だけ?)売れなかった。
世間から見れば仕事には失敗して酒臭い(同時代のゴッホを知っている人が晩年「いつも酒の匂いがしていた」とコメントした記事を読んだことがある)奇行癖のある男にすぎなかった。
自分でも精神的なゆがみを自覚して、自ら精神病院にも入っている。そうか、彼の描く絵は充分に「アール・ブリュット」である。
「売る為や誰かの注文によるのではないく、人間の内面から湧き上がってくる気持ちを吐き出すために、どうしても作り出さずにはいられなかったもの」というのが、「アール・ブリュット」の定義であるのなら、間違いなくゴッホの絵はそれにあたる。