ニュルンベルグの聖エギディウス教会に残されたアダム・クラフトの祭壇。戦災に建物が焼け落ちたにもかかわらず、よくこれだけでも残ったものだ。
細部にはかなりダメージはあるものの、アダム・クラフトの造形力の確かさは充分に伝わってくる。
この祭壇を見たかった理由のひとつは、これを寄進したのがマテウス・ランダウアーという人だった事。
彼の名前は先月ウィーンの美術史美術館にあるデューラーの作品でも見ていたから。
この十六世紀始めの裕福な鉱山業者商人は、デューラーへも、アダム・クラフトへも作品を注文していたのである。
彼が設立した「年老いた手工業マイスターの為の十二兄弟の館」=職人のリタイヤハウスの為に、ウィーンの美術史美術館に残された絵をオーダーし、このエギディウス教会の為にこちらの祭壇をアダム・クラフトに注文している。
下に装飾された文字で注文主=寄進者マテウスの名前が刻まれている。