ヴェゾンのカテドラルであるノートルダム・ド・ナザレ教会の一番奥突き当たりの壁に、石でできた古い司教の椅子が刻み込まれている。
1950年の調査の時、そのすぐ近くの地面を掘るとこの石棺が出てきたのだそうだ。この街の守護聖人である聖ケナンのものとされる。
**以下はヴェゾンの観光局にあった案内書より
聖ケナンはおよそ西暦500年頃上流階級に生まれ、556年から578年にかけてヴェゾンの司教だった。
彼に対する崇拝は、910年ウンベルト司教により始めて聖人の祝日が言及された頃からだと推察される。列聖は1205年。
毎年ケナンの没した2月15日にむけて15日間の祭りが催される。祝日の前日・14日の夜、司教の祝福した焚き火の上を若者たちが飛び越し、その年に結婚する(あるいは結婚すると思われる)者が教会の鐘を鳴らす。
九日間の祈りは日曜日に終わり、カテドラルに安置された聖ケナンの木製胸像が山車に乗せられ運び出される。街をめぐる間、若者たちはこう叫んでいた。「神は信じないが、聖ケナンは信じる!」
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聖ケナンがヴェゾンでなぜこんなに庶民の信仰をあつめるようになったのか? 別の資料をいろいろ読んでいたら、ひとつだけそのことに言及したものがあった。
中世に流行したペストを避けるために聖ケナンに祈ると霊験あらたかだったのだそうだ。