午前中アルルを徒歩でまわる。
円形闘技場、ローマ半円形劇場。そしていつもアルルを訪れて見たいと思って見られなかった場所がフォーラム広場の地下にある。ゴッホの有名な「夜のカフェ」が描かれた広場の下に古代ローマの空間が隠れているのだ。
ずっと以前、はじめてアルルを訪れる前に読んだ本の中で言及してあったのが忘れられず、現地のガイドさんに確認すると「確かにある」ときいた。いつか機会を作りたいと思っていた、その日がついにやってきた。
アルルの市庁舎の片隅にある小さな部屋から細い階段を下っていくと、何もない暗い空間がぽっかり口をあけていた。
古代ローマ時代の地面は現代よりもずっと地下になっていると知っていたが、解説をみてみるとどうやらここはさらに地下のようである。
つまり、古代ローマ時代からすでに地下として造られた場所に降りてきていたのだった。
黄色い小さな電灯が照らし出す空間はざっと長さ150mほど。
ただの長い廊下かと思っていたら、奥で二度直角に曲がり、きちんとしたコの字型になっている。
石の断面・接合面は実にきちんとしていて、まるで最近つくりなおしたように見える。「これは修復した部分なのだろう」と勝手に思う。
奥の回廊にはもう一重二重につくられた部分があり、そちらへ入るとぼろぼろになっていたので「ははあ、こちらが修復前なのか」と、これまた勝手に思った。
が・・・後日調べてみるとびっくり
ぴったりしっかり組みたてられ、まるで最近作ったように見えたアーチの方が★紀元前一世紀の構造(⇒写真上)で、ぼろぼろになっていた方が★紀元後四世紀(⇒写真下)のコンスタンチヌス帝時代だったのである。
古代ローマの建築のすばらしさには今まで何度となく驚かされてきたが、人目に触れない地下に立ち続けてきたアーチは損傷もほとんどなく、ほんとうに最近作りなおしたように見えたのである。
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しかし、この地下回廊を建設したローマ人の当初の目的はいったい何だったのか?
帰国後に読んだ資料によると、この構造の最大の目的は傾いた地形を平らにするための基礎だったという事である。
氾濫する大河ローヌに向かって緩やかに傾斜していた地面にしっかりした基礎をつくりフォロとし、その周りに神殿や地上回廊造ったというわけだ。いかにも用意周到なローマ人らしい。
思い出したのはローマから一時間半ほど海岸線を南下したところにあるテラチーナの古代フォロ。ここも斜面につくられた町に平らな広場を出現させるために二千年後にもびくともしない基礎をつくっているのである。
http://komatsusin.hopto.org/koma/modules/iDiary/index.php?mode=show&date=20070325アルルの人々は長い歴史の中でもこの地下空間を完全に忘れることはなかった。
その一角がイエズス会の教会の地下室となり埋葬所に使われたり、戦争の時には避難所として使われたりして、その堅牢な建物の構造はずっと記憶され続けていたのである。
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面白かった。一見の価値がある場所だった。
けれど、これは一般の観光コースには向かない。
ほとんど何の装飾もみられない陰気な地下回廊はを見たいという私のような物好きが十人ぐらい集まって南仏へ行く機会まで、次回の見学はお預け?(笑)
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午後、ニームの町へ移動。
青空にかがやく円形闘技場の目の前のカフェで軽く昼食。
ニームのローマ円形闘技場はこの手の古代遺跡の中で最も保存状態が良いといわれるている。内部見学には日本語のガイドマシンも用意されていて実にわかりやすい。
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古代神殿メゾン・カレを見学
http://komatsusin.hopto.org/koma/modules/myalbum/photo.php?lid=1835&cid=200町の北にある丘に見える「マーニュの塔」へ登る。
この丘のふもとにも豊富な泉が湧き出しているのが意外だった。
ポン・デュ・ガール
http://komatsusin.hopto.org/koma/modules/myalbum/photo.php?lid=543のような超絶水道橋まで建設して、五十キロの水道管を敷設してユゼスから運ばれてきた水が流れ着く終点がニームの町である。
水道橋で水を運んでこなくてはならないぐらいだからニームは水に苦労した町だと思っていたのである。
それがニームにもこんな豊富な水が沸く泉があったのだ。
それでも水道をひいてきたのは、古代ローマの南仏地方ナルボネンシスの首都のニームにはそれだけたくさんの人口があった証拠だ。
もともとあったこれらの水源では足りないというのは、または、ローマの人々が豊富な水を自由に使える事が快適な生活に不可欠と考えていた事をあらわしている。
あらためて、古代ローマの考え方はすごいと思う。
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今日の宿泊は、その水源の町ユゼスである。
「水源がある」とガイドブックにはそれしか書いていないけれど、ユゼスはなかなか美しい町だった。
町の中心の広場は大きなアーチが構成するアーケードで囲まれている。旧市街の中心には公爵の巨大な城がどかんと存在し、フランスでももっとも長く続く貴族が所有している。
旧市街の端、崖の上にあたる場所には、フランスではここだけだという12世紀の円筒型の中世の塔がある。このベルナルドの塔だけを見たくてユゼスに来る人もある。
夕暮れて涼しくなった町レストランでゆっくり夕食、タルタルステーキがおいしかった。うれしい時間である。