朝、ニースの旧市街の丘へ上がる。
青空の下、いつもバスで上がる展望台よりも「天使の湾」がより近く見える。
マティス美術館近くのローマ遺跡をちょっと見てから、ニースを離れてエグザンプロヴァンスへ。マティスの描いたサン・ヴィクトワール山が見えてきたところでいつもの高速道路を降り、より山のふもとを通る道を行く。
石灰岩の白い岩肌。尾根がまるで横たわった竜のようにぎざぎざ眼前に迫ってくる。途中で車を止めて丘へ足を運ぶとすぐに上まで登って行けそうな雰囲気だが、実際に頂上までいくのはたいへんなのだそうだ。
エクスの町で昼食。
サンソブール聖堂に入る。
教会自体はどうというものではないが、古代の雰囲気をしっかり残した円柱でつくられた洗礼堂が見ものである。
ちらりと覗いた中世のクロイスター=修道院中庭も美しかった。
アルルの町へ向かう途中、レ・ボー近くにあるローマ遺跡=グラヌムへ停車。遺跡の入り口にある凱旋門と記念碑はいつもバスからちらりと見かけては「いつかちゃんと見たい」と思っていたものだ。
崖の上に広がるレ・ボーの町が見える展望台へ向かう。
途中、「イメージのカテドラル」と書かれた看板が目に留まり急遽車を止めて見学する事にした。
ぱっとみてすぐに石切り場だと分かったが、中がどのようになっているかは全く知らない。
ただ、面白そうな予感がしたのである。
ひと口に石切り場といってもいろいろ。
シチリアにある古代の石切り場「ディオニソスの耳」や、アスワンのオベリスク切り出し場にくらべると、この場所の歴史は短い。1820年から約百年ほどつかわれていたのにすぎない。だからガイドブックにはあまり載せられていないのかもしれない。
面白かったのは、1950年代にある写真家がここを使ってスライドを投影するショーを考えついた「スペクタクル」である。それがこの様子。写っている人影からそのスケールの大きさがお分かりいただけるだろう。
中へ入るとはじめは真っ暗で足を踏み出すのもためらわれたが、そこで展開されるスケールの大きなスライドにだんだん惹きつけられて奥へ入っていった。今日はピカソがテーマになっているもので、お馴染みの絵画作品とその背景にまつわる話が大音響の音楽と共に映し出される。
これは充分一見の価値がある。何度もレ・ボーには来ていたがこんなおもしろいものがすぐ近くにあるのに今日まで気付かなかった。
ガイドブックに書かれたところをなぞって歩いているだけでは、ほんとうに面白いところを見失っているのかもしれない。