今回オルセー美術館で目に留めたのがこのホイッスラーの代表作のひとつ「画家の母」であった。
この作品は、映画「ミスター・ビーン」で登場したのをきっかけに注意してみるようになったが、今までことさら気に入っっていたわけではない。
ホイッスラー作品で最初に深く興味を持ったのは絵ではなく、ワシントンDCのフリーア・ギャラリーで出会った「孔雀の間」である。※小松の書いた記事、下記にて
http://www.nta.co.jp/ryoko/tourcon/2006/060701/モデルの母はこの時67歳。
服装にも表情にもその指先までも、彼女が謹厳実直なクリスチャンであることが刻み込まれている。ホイッスラーはこの母にきびしくしつけられたのだろうなぁ、と思わせてくれる。
ホイッスラーは裕福な家庭に育ったというけれど、それでのほほんと育ったのでないことを、母の肖像を描くことで語れてしまっている。
少し興味を持ったので調べてみると、この作品は最初「画家の母」ではなく、「灰色と黒のアレンジメント」という題名で1873年にロンドンで公開されていた。
十年後パリで「画家の母」と副題がつけられて、サロンにてはじめて高く評価されたそうである。
描かれている人が「母」であると知って見ると、鑑賞者にまた違った感情を呼び起こすということなのだろうか。
ホイッスラー作品の多くは、まるでクラシックの曲名の様な題がつけられている。彼の音楽嗜好はきっとクラシック・・・って、よく考えてみたら彼の時代には音楽というのはほとんどそういったものしか存在していなかったのでした。