新橋演舞場で歌舞伎。
中村吉右衛門の「金閣寺」
この演目はもともと文楽だったものだそうで、歌舞伎になってからも、登場人物の姫が文楽人形の振りをして演じる場面が売りのひとつになっている。
雪舟の孫の雪姫が、桜の花びらを集めてねずみを描き、そのねずみが縄を喰い切ってくれるという場面。
この役は通称「三姫」といわれる、女形の中でも難しい役どころなのだそうだ。
文楽人形になりきって無表情に。
後ろの黒子にさも操られているように、手足をぴょんと跳ねさせたりして演技する。
今月ザルツブルグで人形劇の「魔笛」を見たので特に思うのだが、文楽というのは間違いなく世界最高の人形劇である。
それに魅せられた人が多かったからこそ、歌舞伎の中で生身の人間が人形の振りをするなどというシュールな場面が呼び物となったにちがいない。
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この日の演目で個人的に一番楽しめたのは「心猿、近江のお兼」。もともと長いお話だそうだが、その中から踊りだけをとりあげての上演。
福助さん実にお綺麗で、観客にも一番うけていたように見えた。
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「らくだ」は落語から歌舞伎化されたもの。
笑わせてくれる話なのだけれど、死体を担いで躍らせるという設定はかなりブラック。
当時は死体というのが今ほどタブーでなかったからこんな話が書かれたのだろう。