「映画『サウンド・オブ・ミュージック』で「ドレミの歌」が歌われるシーンに使われた階段があります」と、ガイドブックに書いてあって、それを必死に探したのは二十年前だったか?
もっともっと立派な階段を探しても見つからなかったはずだ。映画をもう一度見て予習しておけば分かったのに→自分。
はじめてザルツブルグに来たときはそんな感じだったけれど、今は「サウンド・オブ・ミュージック」の映画はDVDも買って何度も見たし、サウンド・トラックに関しては一緒に歌えるほどになってしまった。
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朝、ガイドさんにお会いしてお願いした。
「今回は『サウンド・オブ・ミュージック』がお好きな方があるので、それにあわせて説明してください」
ガイディングというのは同じものが視覚に入ってもまったく違う説明が可能である。話す相手によってそれを選べるのがすぐれたガイドというものだ。
たとえばこの写真を見て、「ドレミの階段」です、と説明するやり方だけではない。階段の上のフランツ・ヨーゼフ皇帝の行幸記念プレートについて話しだせば、ストーリーは全然違った方向へ導けるだろう。
惜しむらくは、現地でお会いするガイドさんというのは、ツアー全体の行程を知らない人がほとんどだということ。前日われわれがどこから来て、明日われわれが何をするのかも知らない。
それはガイディングする方にとっても良いことではないので、《手造りの旅》の場合には、話し手の方を選んでじっくりバックグランドを説明してからはじめてもらうのです。