音楽祭ツアーの出発準備の日々だけれど、クラシックCDを借りたついでに見かけた表題の映画も借りて見てしまった。まったくの衝動借りであったが、興味深く見ることが出来た。
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舞台は2000年の南アフリカ。
まだ十年も経っていない実話が元になっている。
今、南アフリカではアパルトヘイト時代の人種差別犯罪が拷問や殺人など重大事件を含めて白日の下に晒されはじめている。
しかし、普通に告発するだけでは自国を憎しみで分断するだけだ。専制的な政治が行われれば、ジンバブエの様な事態にも陥りかねない。
そこで、審問委員会は「真実をすべて話したものは免罪にする」という決まりを設け、それによってさらにいろいろな現実が明らかにされていったのだ。この映画の舞台はその審問委員会である。
真実を明らかにする事を、映画の冒頭では「古傷を開く」と表現していた。
告発される白人の元警察官。
十五年前の真実が明らかになっていくと、予想通り憎しみもまた燃え上がってくる。
そこで登場人物のひとりによって語られた一言が印象的であった。
「この審問は悪いやつらを追放するためのものではない。これは自分たちの社会を本当に統合していく機会をあたえてくれる窓なのだ。記憶が石の様に硬くなってしまう前に」
来年「ワールド・サッカー」が行われる南アフリカ。
今、大不況にある世界にあっても活況を呈している国だときくが、まだまだ古くなってはいけない「傷」を抱えているにちがいない。