失脚してモスクワ郊外に隠棲していたフルシチョフの死去は1971年。
葬儀が行われるという裏情報をつかんだNHKの小林和夫氏は、9月12日の夜明け前にノボデビッチ修道院に入り込んだ。
新しく掘られた墓穴を見つけそこでひそかに待ちうけ、手回しカメラをつかって埋葬されるフルシチョフの葬儀を撮影した。このスクープ映像はどこよりも早く日本発で世界中にながれたそうである。
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ノボデビッチ修道院に興味を持つようになったきっかけは、このエピソードが一番最初に出てくる「エルミタージュの緞帳」という本を読んだ事にある。
著者は前出の元NHKモスクワ支局長の小林和男氏。怒涛の変革期にあったソ連→ロシアの事情をわかりやすく理解させてくれる。続編にあたる「一プードの塩」と共に、いまもってロシア旅行をする人にまず勧めたい。
最初にロシアの《手造の旅》を企画した時に、ノボデビッチ修道院を是非入れようと思った。自分がまだ行ったことがない場所であっても、必ず参加の皆に興味を持ってもらえる場所だという確信があった。この本にその自信を与えてもらっていたのである。