アムステルダムのベギン会修道院だった建物の一角に隠れるように埋め込まれている教会がある。資料によると、プロテスタント優勢のオランダにおいて、少数派のカトリックのものだから目立たないようにする必要があったとのこと。なるほど。
教会内の展示物をみていて1792年のこの教会内部をうつしとった銅版画があるのが目に留まった。ぱっと見たところは忠実に当時の様子が分かると感じさせるのだが、実際の教会内部と比較して観察してみると細部はだいぶ違うことに気づく。
祭壇の装飾は後に変更されたのかもしれないし、天使の像なども取り替えられたのかもしれない。しかし、一階と二階とを仕切る天井の位置は変化していない筈だ。明らかに事実と違う縮尺になっている。つまり、かなり細部は描き手によって意図的に変えられているのだ。あるいは、現場でデッサンだけして、アトリエで思い出しながら彫っているからかもしれない。
美術館博物館で同じような昔の様子を描いた絵を目にするが、それが「ほんとうの風景だった」と、そのまま信じこんでしまうのはとんでもない間違いとなる場合が多い。
この版画はたまたまその現場自体に展示されていたのでこうして比較できるのが幸いだ。