オランダ、ベルギー、ルクセンブルグ。
ベネルクス三国は花盛り。特にキューケンホフ公園がオープンしている3月半ばから5月半ばには世界中からグループが押し寄せる。
これらの国へのツアーに添乗する皆さんへの研修会で三時間ほど講師役で話した。ま、皆さんそれぞれの経験を話してもらって私にも役に立つ時間であった。
ひとに話をするというのは、自分でなんとなく覚えているのとはだいぶん違う。もういちどきちんと整理しておかなくてはいけない。写真もたくさんとってあるものを見やすいように分類しなくてはいけない。
数日前から準備をしていたが、やればやるだけ深みにはまっていく作業でもあり、結果、どのぐらい役に立つ話になったか心配であります。
写真を見ていく中で「そうそう!これがんばって撮ったなぁ」と思い出したのがこのブルージュの白鳥。
**
くちばしに「B」の文字が刻印されているのが見えるだろうか。
ブルージュに行き始めた頃、現地のガイドブックに「…なのでブルージュの白鳥にはいまでもくちばしに「B」の文字が刻印されている」と書かれていて、是非ともそれを確認したいと思った。
柵の中にいる白鳥を、あれこれじぃっと見つめて歩く。しかし、なかなかはっきり「B」が確認できるものはいない。※あとから聞くと、最近の若い白鳥には刻印されていないものも多いそうな。
何羽も見ていくうちに「お!これがそうか」と、確かに「B」が確認できる個体を見つけた。
しかし、問題はこいつがそう簡単にカメラの方へくちばしを見せてはくれないことである。白鳥の長い首があっちこっちへ動くたびにそれを追って移動。
「撮った!」と思って確認すると逆光でまったく「B」が見えていなかったり。
そういう苦労の末にやっと撮ることが出来た一枚がこれなのである。
「B」の刻印の逸話は15世紀に遡る。
1488年。ハプスブルグの御曹司マクシミリアンがブルージュ滞在中市民の反乱が起こり、マルクト広場に現在もある建物の一室に監禁される。
そして、部下のペーテル・ラングハルスが首を切られるところを見せられるという屈辱を味わった。
マクシミリアン自身はこの危機を脱し、後にブルージュ市に代々続く償いを求める。
殺されたラングハルス(「長い首」の意味)のために、彼の紋章でもあった白鳥をブルージュ市は飼い続けること。彼らのくちばしにそれと分かる刻印をすること。
私のうろ覚えの記憶では「B」は殺された家臣のイニシャルだったのだが、実は単純にブルージュ市の意味だったらしい。