タンペレ大聖堂の天井ど真ん中にはこんな蛇が描かれている。
建築当初、そのデザインを知った教会側は当然反対した。
しかし画家はこう言って説明した。
「意識してもしなくても、誰の心にも蛇は住んでいます。それを理性の力で押し留めて生きているのです。まわりに描かれた白い羽が押し留める力を表しています。」
どちらが宗教者なのだか分からない言葉である。
こう説明されてあらためて見上げると、赤い塊が自分の中の押し留めるべきものでその中で蛇が苦しんでいるかのようだ。教会のほかの絵画やデザインが粛々とまじめ顔なのに対して、この蛇だけがどこかユーモラスにもみえてくる。
建築されたのがほぼ百年前。一見クラシックな聖堂だがこの照明器具といい、他の細部のデザインといい、当時の最先端アール・ヌーボー、アール・デコで構成されていて一見に値する。