アスワン、ナイル西岸の砂漠の崖を上る。
中腹に穿たれた墳墓は1947年にイギリス人によって調査が開始されたそうな。
「あまりたいしたものはないですよ、登るのに大変なだけ」
今までのガイドさんにそんな風に言われたので、いつも生きたいキモチをあきらめていたのだが、今回は違った。「雰囲気が違ってよいですよ、眺めがよいし」という反応をくれたガイドさんと共に、ついに念願の場所に登ることができた。
砂に埋もれた階段は確かに登りやすくはなかったが、それも十分ほどのこと。そこまでいって出会えるアスワンの風景をみれば充分価値がある。
崖に沿って続く道をたどっていくと次々に古代の墓穴が見えてくる。中はルクソールほどの装飾ではない。しかし、それがかえって雰囲気をよく残しているように感じられる。王家の谷のようにめちゃくちゃに人の押しかける観光地では感じられない雰囲気があるのだ。
人は別に観光地に行きたくて旅するわけではない。ガイドブックやテレビ番組の確認は自分だけの旅ではない。
それよりも自分自身が心から「来て良かった」と心から思える場所に出会いたいのだ。ここはそう思える場所だった。