三時間半におよぶコンサートが終わり、いつものエンディング曲That’s my desireがテープで流れた。「本日は山下達郎のコンサートにお越しいただき・・・」そんな終焉のアナウンスが流れる。
しかし拍手はずっと終わらなかった。
観衆はステージを注視し続ける。今日がこの大阪フェスティバルホールの最後だということをここにいる誰もが知っている。
2008末でフェスティバルホールが取り壊される事が決まったというのが、達郎さんが今回ライブ・ツアーをやる動機になっている。
彼が「日本でいちばん好きなホール」だと言い切っていた場所で演奏する、今が最後の最後の時間なのだ。
五分以上の拍手の後、ステージに再びスポットライトがついた。大きな歓声のあとにこやかに達郎さん登場。「殺す気か(笑)もう私服に着替えちゃいましたよ」「こんなの十年ぶりじゃないか、さすが大阪!」
ほんとうに異例な再度の登場だったのだ。
その後に奥さんの竹内まりやさんも登場。
「じゃ、ぶっつけですが」といった後、二人の定番デュエット曲Let it be meのイントロが流れ始めた。
歌わないあいだ、達郎さんは頭をめぐらせて最後のフェスティバルホールをゆっくりとふりあおいでいた。
売れない時代のあと、この大阪の地でのブレイクから、彼の音楽人生はやっとまわりはじめた。1980年はじめてフェスティバルホールでやったコンサートのことを、28年後の今夜も大事そうに話していた。