「ここは入場観光にはなっていないので外見から・・・、でも入りたい方はぁ・・・今すぐなら15分だけ!希望の方はすぐこちらへ」
本来入場観光になっていなかったシャンボール城なのだけれど、入り口までご案内した時、とっさに入ってもらうことに決めた。少しだけ時間に余裕があったから。私が好きな「光の井戸」をつくりだしているこの写真の階段もあるのだし。
後日、ツアーの最終になってから「あの時シャンボール城の中をみせてもらってほんとによかった」と言っていただいた方があった。
そうか、十五分だけでも人の一生の宝物を造り出せるのだ。ほとんどの人にとってここを訪れるのはこの一回だけなのだから、旅行を生業として何度もここを訪れるも我々も、その「はじめてのキモチ」を絶対に失ってはいけない。
※この写真の階段は螺旋を巻きながらテラスまで登っていき、その真ん中に出来た円筒形の空間に天空から光が入ってくるように設計されている。これは古くはクレタ島のクノッソス宮殿にも採用されている「光の井戸」というスタイルである。途中から見上げる円筒形の光が美しい。
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忙しいパッケージツアーでは入場観光になっていない場所はたくさんある。ロワール古城めぐりといっても本来入場はシュノンソー城だけ。それは致し方ないのことだと充分知っている。
行程どおりツアーを運営せず、そこで何か事件が起こったりしたら?たとえば、この城に入場していて、テラスから落ちたりしたら?・・・「なぜ行程どおりの運営をしなかったのですか?」と旅行会社は我々現場の者の責任を問うに違いない。
いかなる善意であっても「間違った事」だったと断じられてしまうだろう。
しかし、それを恐れて善意を発揮しなくなったとしたら、その人はすでにマニュアルや惰性に飲み込まれている。