この岩だらけの丘に聖母マリアが現れたのは1981年6月24日の事。
夕方6時ごろ6人の子供たちの前に、子供を抱いた青い衣の貴婦人が現れ、こどもたちは驚いて逃げ帰った。
翌日も同じ時間にその場所に行くと再び同じ姿の婦人が現れ、今度は子供たちと一緒に祈ったのだそうだ。
今では世界中からカトリック教徒が巡礼に訪れる場所になっている。
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我々は朝9時モスタルのホテル出発。
モスタル旧市街は昨日見学したので今日はドブロブニクへ行く前にだいぶ時間の余裕がある。そこで、気になっていた巡礼地メジェゴリエへいくことにした。
直通の道が閉鎖されていたが、回り道をしても9時50分にヤコブ教会の駐車場へ到着。二つの塔を持つ新しい教会はすぐわかった。
そっと中へ入ると英語のミサをやっていた。たくさんのアメリカ人らしい大柄な男女が頭をたれていた。
外へ出て、「御出現の丘」を探す。
しかし、あたりを見回してそれらしき丘が近くに見えない。
どうやらかなり遠いようである。
簡単な地図が表示されていたので見てみると、それほど高い丘でもないようだ。地図どおりに方向を見定めて「御出現の丘」の標識に沿って歩き出す。
のどかな田舎道を20分ほど歩くと、岩だらけの丘への入り口へたどりついた。
今日は良い天気。
ブドウ畑の中をのんびり歩くには良い日である。
丘にはたくさんの西欧人がのぼりはじめている。歩くのさえ辛そうな人たちもまわりの手を借りながらゆっくりゆっくり上っていく。岩の斜面は思ったよりもきつく、思ったよりもずっと長い。15分ほど上っても、マリア様の像はまだまだ見えてこない。
それでも信仰心に動かされている人々の足は止められない。
なかには裸足で上っていく人さえあるのだ。
たった九人の我々もペースはひとそれぞれ。
マリア様のそばにたどりつく頃にはばらばらになっていた。
岩場にはたくさんの「祈願プレート」「ありがとうプレート」がおかれている。「静粛に」と書かれた看板があり、たくさん人が集まっているにもかかわらずとても静謐な空気が漂っている。
聖地を聖地たらしめるのは、結局その場所に敬意を払う人の気持ちそのものなのだろう。