カプリを出発した船がソレントに近づくと、古代のヴィラの遺跡が海に面して建っていた。
「ポリオの別荘ですよ」
と、同行してくれたファビアンさんが教えてくれる。
「ほぉ〜、彼も晩年はこんなところでゆっくりしていたんだぁ…」
ガイウス・アシニウス・ポリオは、ユリウス・カエサルを支えた才能ある若者のひとりだった。ルビコン川を渡ったユリウス・カエサルがポンペイウスを相手に内戦をはじめる羽目になってから、カエサルが陣を任せることの出来た数少ない一人である。
すべてに勝ったカエサルがローマ改革をはじめていた矢先暗殺されたのは50歳。ポリオは32歳。
その後の動乱において、アントニウスとオクタビアヌスの間にたち、ブリンディシの和議を成立させ、同年紀元前40年の執政官にもなっている。
オクタビアヌス=後のアウグストスより七歳年長の彼は紀元後5年に80歳で没。
晩年はアウグストスの滞在したカプリの見えるこの別荘でゆっくりすごしたんだろう。波乱万丈の人生だったろうが、人間生き残ってなんぼである。