ヴュルツブルグの観光のハイライトは大司教のレジデンツだろう。世界遺産にも指定されたティエポロのフレスコ大天井画もある華やかなレジデンツももちろん良いのだけれど、小松としてはリーメンシュナイダーの比類なき彫刻作品もぜひ見ていってほしい。
15世紀末に実在したこの騎士の墓碑は、間近に見ることで五百年の時を越えて騎士コンラート・フォン・シャウムブルグの存在を感じる事ができる。
以下「リーメンシュナイダーの時代」植田重雄著・恒文社刊より引用。
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司教の忠実な臣下コンラート・フォン・シャウムブルグという騎士は、晩年になり念願のエルサレム巡礼へ出発する事になった。出発に際し、「もしも自分に万が一の事があったら」と考え、リーメンシュナイダーに自分の立像を彫らせた。
1499年彼は無事エルサレムにたどりついたけれど、帰路の船中で病没。ヴュルツブルグの参事会は生前の彼の願いを承認し、1502年にリーメンシュナイダーがこの墓碑を完成させた。
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遺体は果たしてヴュルツブルグに戻ってきたのだろうか?あるいはその訃報だけが遺品と共に届けられたのかもしれない。
甲冑から出ている顔の部分だけが毅然とした表情と思慮深そうな性格を見せている。実際の本人がどのような人であったのか今では知る由もないが、リーメンシュナイダーは騎士本人が後世に残したかっただろう自分自身をきちんと写し取ってくれているように見える。
騎士は自分自身の墓碑を確認し、満足してエルサレムに旅立っていったことだろう。