朝アマルフィを出発し、ラヴェッロ近くからソレント半島を越えてナポリへ向かう。11時過ぎにはホテルに到着し、午後はナポリ再発見の日。スパッカ・ナポリの地下、カラヴァッジョの「七つの善行」のミゼリコルディア慈善院、カポデモンティ美術館をまわる。
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ナポリには地下都市があって・・・」という話を以前聞いたことがあり、密かに行く機会を狙っていた。それは、全く想像をこえたものだった。
雑然としたスパッカ・ナポリの路地をまがると、立派な石の入り口がある。ここはガイド付きでのみの見学で12時と14時の二回だけのオープン。
入ってみるとわかるのだが、とても自分達で自由に歩けるような場所ではない。いくつもの空間を細い路地がつないでいて、中心部を離れると全く電灯設備がないのだから。
20世紀につくられた長い階段を下りると、ちょっとした広場にでる。そこでここがどんな場所なのか説明をうけてから、ひとりひとりロウソクを手にしてガイドの後を歩く。
ここはギリシャ時代にネアポリス=新しい町だったナポリの城壁の石を切り出した場所である。ぐるりと町を取り囲む凝灰岩を切り出したあとに広大な地下空間が残った。
ローマ人たちはこの空間に新鮮な水を誘導して貯水槽として利用しはじめた。イスタンブールで見学する「地下宮殿」と同じ目的の貯水槽である。
水の道としてつくられたのが、今我々が歩いているルート。どおりで狭いはずだ。場所によっては私でもからだを斜めにして通るところさえある。一緒に入った欧米人グループからは二人がこの水路路地へ入るのをあきらめざるをえなかった。
この空間は現代になっても役に立つ時あった。第二次大戦後期、ドイツの空襲をうけたナポリ市民はこの石切り場に避難していたのである。