モンゴルの伝統的な楽器に「馬頭琴」がある。滞在最後の夜に若い演奏者にホテルに来て演奏してもらった。
ヘッドが馬の形をしているので「馬頭」という。楽器の構造はバイオリンや胡弓と同じ。弦を弓で弾いて鳴らしそれを箱で共鳴させる。二本の弦は馬の尻尾の毛で出来ている。弓もまた同じ素材のようだ。
同じ弦楽器を演奏する者として興味があったので、演奏が終わってから楽器をさわらせてもらった。が、これが本当にほんとうに!難しい!!
弓を弾く右手の所作はバイオリンやチェロと同じようであったが、
弦を押さえる左手が全く違うのだ。
左手は弦を「押さえる」と思っていたらそうとは限らず、指の背で「押し上げ」たり、指と爪の間で弦を「押し出した」りする。だいたい三つの「押さえ」方をするのがわかった。世界中でいろんな弦楽器をさわったが、こんな複雑な「押さえ方」をする楽器を他に知らない。
その間、親指はネックの背に当てているからバランスが悪くなる。ボディをひざではさみ、しっかり支えていなくてはならない。
自分で触ってみて、馬頭琴を演奏する人の技術の特殊性を実感した。これに比べるとギターというのはほんとうに使いやすく、いろいろな奏法が可能な弦楽器であるのがわかる。なるほど、だから普及したんだな。