17年前に一ヶ月の視察旅行をご一緒したグループの集まりが、毎年8月にある。全国から集まってきたメンバーだったので、集まる場所は毎年違う県に移る。それぞれの地元手配ならではのイベントが楽しい。
今年は浜松だった。
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浜名湖がこんなに浅いとは知らなかった。
湖の真ん中まで出ても底がみえるぐらいなのだ。
夕方、暗くなる頃三艘の小船が迎えに来てくれて13人で分乗。
「蟹は夜行性だで、もうすこうし暗くなるのを待ちょろう」と漁師さんが言う。
蟹は、陽のあるうちは砂にもぐっていて上から見てもどこにいるかなかなか分からない。日が暮れると砂から出て湖底をのこのこ歩きはじめるので、そこを船のライトで照らしてモリで一突きにするのだ。
船の舳先に船頭さんが立つ。
「右側のおきゃくさん、そこに蟹いるのみえるら?」
ゆらゆら揺れる小船に立ち、三メートルぐらいある長くて見かけより重いモリをかまえた。湖底に確かに蟹の甲羅が見える。そぉっとモリの先を近づけて、さくっと突く!あっ、はずれ。蟹の足だけがモリの先についていた。
「強すぎると壊しちまうで」
上手く突くのに、実は力はそんなにいらないようだ。
力が入るとけっこうはずしてしまう。また、水の屈折で実際の場所とずれて見えるので、出来るだけ近くに寄ってから突く事が必要だ。
かく言う私はあまり上手な「モリ使い」ではなかったが、しばらくたつうちなんとか突くことが出来た。素人でもわりに楽しめるものだ。
上手な人は食べる時の為に甲羅の真ん中をはずして傷をすくなく突く事もするそうな。