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チェスターのタウン・クライアー
2008-06-26
午前中、チェスターの観光。
チェスターはローマ人がグレート・ブリテン島を領土にしていた紀元後一世紀に軍の駐屯基地だった三つの都市のうちのひとつである。

現在旧市街を囲っている城壁も北と東の部分はローマ時代の基礎を利用している。ノースゲート通りはデクマヌス(ローマ都市内を南北に走る主要路)そのものであるしイーストゲート通りはカルド(東西に走る主要路)にあたる。

この二つが交差するところがザ・クロス(交差点)で、毎日正午には昔の服装をしたタウン・クライアーが登場する。
新聞もラジオもテレビもなく文盲が市民の多数を占めていた時代、日々の重要事項や執政者の御触れを市民に知らせるためにこういったシステムがとられていたのだ。

今日も12時丁度にそのタウンクライヤーがやってくる。
時間を合わせて待っていた我々の前に、18世紀貴族風のカツラをかぶり宮廷服を着たタウン・クライヤーがにこやかに登場した。

現代のタウン・クライヤーはもちろん観光用である。何の政治向きの連絡があるわけではない。いったいどんなことを「クライ」するのだろう? 

突然大きな声で読み上げはじめたのは、なんとこの町を今日訪れている観光客の名前だった。たぶん観光局かどこか希望すればここで名前を呼んでもらえるシステムがあるのだろう。「マサチューセッツ、ユナイテッドステイツ!・・・」という風に出身地を付け加えていく。

十人ほどの名前を読み上げた後、タウンクライヤーは集まっている人々に話しかけた。

「ウェールズからの人?」チェスターから西に出ると15分もせずにウェールズ領になる。ウェールズ人が手を上げると、タウン・クライヤー氏は「クロイツォー!」(ウエールズ語で「ようこそ」の意味)と叫んだ。そうやっていろいろな国挨拶してくれるという趣向である。

日本人の番が来ると、われわれは喜んで「はぁい!」と手を上げて、「ヨウコソお〜!」と叫んでもらった。
予想外だったケニアからの人が居たが、タウンクライヤー氏はその人に耳うちしてもらってから現地の言葉を叫んだ。

ご存知のように英国連邦はたくさんの英語を公用語にした国があるが、英語圏といっても、国ごとにちがう挨拶がある。タウン・クライヤー氏はアメリカ人には「HI!」と話しかける。オーストラリア人には「グダァイ!」と挨拶する。ニュージーランドからの人には「ケオラ!」、これは先住民マオリの挨拶だ。

こんなふうにいろいろな英語圏の特徴を真似してどっとウケているのだが、我々にはこれが笑えるほどには理解できない。くやしいが英語を日常的にしゃべっている人でなくては、きっとこの違いは味わえない。

日本語でも、関西弁が聞こえてきてなんとなく「おもろいなぁ」という感じたりする。これは、言葉を理解するというのとは別の次元の言語能力なのだろう。

実に、実に、英語は多様である。
とても芝居や映画をそのまま理解出来るようには生涯なれない。
タウンクライヤー氏のくすぐりも残念ながら分からない。

せめてニュースぐらいは辞書なしで理解できる事と、必要な情報をネットから利用できる程度の英語能力だけは持っていたいものだと思うだけだけである。



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