「ほら、ここにLady birdが彫刻されています。たくさんの人が幸運を願って触っていくので毎年塗りなおされるのですよ。」
グラスゴー大聖堂の正面祭壇前に海軍から寄贈された椅子がおかれている。
1963年、現女王陛下の母、同じくエリザベス=通称クイーンズ・マザーに贈られていたものだ。
大柄なガイドのクリストファーが天蓋裏を覗き込んで指差した場所に、普通に見ていては絶対気づかない小さく赤いてんとう虫がかわいく彫刻してあった。
このLady bird=てんとう虫は椅子を彫刻したトーマス・ベヴェレッジのこんな経験から彫りこまれた。
ドイツとの戦争中、海軍に所属したトーマスは機雷パトロールにでかけた。
広げた海図の上に、ふと一匹のてんとう虫が降りてきたて、それを叩き落とすのはなんとなく悪い運を招くような気がしてその命を助けた。
しばらくしてトーマスの乗った船は武装したドイツ商船と遭遇し、あろうことか衝突!
燃料タンクが爆発するという惨事にみまわれた。命を落としてもおかしくないところだが奇跡的に無事で、しかもドイツ兵二人を収容して帰還する事ができた。
「これは、あの時救ったてんとう虫のくれた幸運だった」
トーマスは大聖堂に奉納する椅子にそっとてんとう虫を彫りこんだ。
今ではグラスゴー大聖堂の隠れたマスコットになっており、てんとう虫バッジも売られている。
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マッキントッシュのデザインコレクションはケルヴィングローヴ博物館で見ることができた。しかし、デザインというのは本来日常に使われる場所にあってこそ生きてくるもの。
そんな日が来るかどうかはわからないけれど、ウィロー・ティールームにも行ってみたいと思う。