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ソコルル・メフメット・パシャ・ジャーミー
2008-06-12
前回に続き、シナンの建築作品をひとつ、こだわって見ていただいた。自分も、ガイドさんも始めての場所だったが、必ず見る価値のある場所だという確信があった。

旧市街、ヒッポドロームからあまり観光客が訪れていかない方向へ坂を下りていく。崩れかけたレンガの塔の向こうにモスクのミナレットとシナンらしく軽快なドームが見えた。

このモスク、ほんとうは坂の下からアプローチして行きたいと思っていた。
夢枕獏さんの「シナン」のあとがきを書いたディレクターが、『下から上がっていく時にドームがだんだんみえてくる』と書いていたからである。

今回やむを得ず先に上からドームを見て中庭に入っていったが、ドームの中へ入る前に、わざわざ階段を下りて外へ出てみる事にした。すると、階段の上に見えるはずのドームを隠す目的で四角い壁がわざわざ建設されているのが分かった。

建築家シナンが、訪れる人に自分の作品をどのように見せたかったのかを理解できる。階段の下から見えてしまってはおもしろくない。それは古代のギリシャ神殿と同じように、階段を上るにしたがってだんだんとその姿が眼前に迫ってくる。そんな風に意図しているのである。

ジャーミー(モスク)もギリシャ神殿も、宗教的空間というのは舞台と同じで、どのように人に印象付けるかが大変重要である。

重い仕切りを開けて入ると、ひんやりとした内部はさらに我々の眼を驚かせる。

縦に長い上昇感のある空間が正面のミヒラブをかこむ、青いタイル装飾によって強調されている。それはタイルの美しさだけでも、建築の美しさだけでも成立しなかった、複合の空間美だ。どんな美術館にも持っていく事のできない、ここを訪れてしか感じることの出来ない空間表現である。



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