アヤソフィアというのはイスタンブールにだけあるわけではない。ここトラブゾンにも13世紀に建設されたものがある。
ヴェネチアが主導した第4回十字軍が1204年にコンスタンチノープル=現イスタンブールを陥落させた際、母方のグルジア王国を頼って逃げてきたビザンチン皇帝の孫一族がこの地にコムネノス朝トレビゾンド帝国を建国。首都トラブゾンにも同じアヤソフィアを建設した。
本家イスタンブールのアヤソフィアが6世紀建造の唯一無二の建物であるのにくらべると、だいぶんこぢんまりはしているが、歴史的にも美術的にもおもしろい建物である。
正教会の正当な流れを汲むこの建物は、1461年にトレビゾンド帝国がオスマントルコに征服され、イスタンブールのアヤソフィア同様モスクに転用された。フレスコ画の多くはその時に破壊されたり漆喰の下に塗りこめられたりした。
しかし、少ない英語解説を読んでいくと、ここが本格的に荒廃したのは1916年から数年続いた同じ正教徒であるロシア人による占領時代であったように感じる。倉庫や病院として使われ、トルコに返還された後放棄された。
黒海を見晴らす高台にあるこの建物は、エジンバラ大学の協力の元で見事に修復され13世紀の面影を甦らせている。