いろいろな展覧会の記念に図録を買うことはよくある。
しかし、どれだけその図録を丹念に読んでいるだろうか。あとからぱらぱら見返して「ああ、この絵もあったねぇ」と思い出す事に使うぐらいなのかもしれない。
図録がいかに丹念に作られていようと、図録だけを見て作品の良し悪し・好き嫌いなどは決して判断できない。大量生産の印刷というのは、あたりまえだがオリジナル作品の細部は再現されようもないのだから。
大きなものは縮小し、小さなものは拡大して、ちょうど我々の手の中でめくれる大きさにしてくれている。図録の写真で見ていたものが、本物を見て全然違うと思える時はよくある。
それにもかかわらず、図録を買う意味は何か。
それは図録の解説がおもしろいからである。展覧会というのはそのテーマについての最新の研究成果が発表される場となっていて、刊行されて何年もたっている本よりもずっと興味深い内容が書かれていることが多いのだ。
図録というのは、きれいな「図」が大事なのではなく、収「録」されている新しい情報にこそ読む価値がある。いわゆる専門家の研究結果が一般書籍になるには相応の時間がかかり、売れなければすぐに絶版になってしまう。
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マウリッツハイス美術館で見たアドリアン・コールトについての情報は、ずべて展覧会の図録から得たものである。
http://komatsusin.hopto.org/koma/modules/news/17世紀末のこの画家については、たとえオランダであろうともこれだけ充実した展覧会はそう簡単には開けなかった。これから先もほとんど考えられない事だ。
とすると、おそらく彼について書かれている最新情報にして最も充実したものがこの図録であろう。