汐留でやっている「ルオーとマティス」の展覧会へ。
二人ともギュスターヴ・モローの門下生でありながら、対照的な画風を開花させた事で、師のモローの指導力が高く評価されている。先日のNHK新・日曜美術館でも「対照的な画風の二人」の半世紀にわたる交流として話を進めていた。
ぱっと見の二人の作品は確かに違う。ルオーの宗教観が前面に出ている律儀で剛直な線。マティスの簡素にして優雅な線と絶妙の配色。「ルオーとマティスはぜんぜん違う」と、私も思い込んでいた。
しかし、今回初期の二人の作品からだんだんと画風が変化していく様を追っていくと、実は二人の作品がごく近い表現のように見えてきた。特にルオーの作品は決してモノクロームではない。むしろステンドグラスの光のように、鈍いけれど深い色がちりばめられている。マティスの提示する驚くような色彩のコントラストはないけれど、充分にカラフルだと感じた。
同じ揺り篭で育った二人は、どんなに大きく育っていってもその根っこの部分は共通している。
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読んでみたかったのは、最近見つかったという二人の往復書簡の内容。元の手紙がいくつか展示してあったが、その内容の日本語訳はみあたらなかった。日本語訳の完全版が出来たら、ちょっと読んでみたい。
二人はそれぞれの絵の内容についてなどは、手紙にほとんど書いていないそうだ。あれこれ言わずとも分かり合えていたのだろう。いつも会っていなくても充分通じ合っているという信頼感。これを分かち合えるのが本当の友人というものなのだろう。
いつも近くにいて話している事が友人の要件では決してない。